みちしるべ

『みちしるべ』第15号 2005年5月26日発行

 

昭和初期の茶作り

鳥取県 森田 和喜雄

義母は、春になるとお茶作りが仕事でした。
学校から帰ると、門の所にクド・焙烙ほうろく蒸篭せいろまきがそろえてあり私も「手伝って」と言われ、翌日朝4時に目を覚ますと、すでにクドに火が起こされ釜の湯がたぎっていました。
私は茶ザルをもらい日の出までに5杯程度茶摘みをし、義母に渡しました。そばで見ていると、摘み取った茶葉を軽く露揉みをし、蒸篭で蒸し、出しては冷まし、ござ揉みを4、5回繰り返していました。特に火と蒸し加減、お茶を揉む温度に気を遣っていたと思います。
煎茶は3日程で終わり、10日後、釜炒り茶を作りました。
まずクドに焙烙を乗せ用意をしてから茶畑に行き、3枚葉から5枚葉を茶ザルに5、6杯摘み取り持ち帰りました。私はクドの火を炊くのを任され、義母は茶ザルで露揉みをし、焙烙の温度を確かめながら摘み茶を入れ丁寧に炒り、揉んでは炒りを3回繰り返していました。
後日、新しい葉が伸びた頃、春ばん茶として8〜10枚朝露が落ちてから枝ごと刈り取り、日陰の風通しのよい所に束(たば)干しから綱干しし、1ヵ月後、焙烙で炒って茶箱に保管していました。使うたびに茶箱から出していましたが、茶箱は60センチ角もある桐の箱で二重になっていて内側には和紙が貼ってありました。あまりに立派な箱なので尋ねると、大工をしている叔父に作ってもらったとのことでした。
義母は春・秋2回刈り取り、ばん茶を作っていましたが、春のばん茶は新芽や茎を一度に刈り取って作るので味も香りも柔らかく、秋のばん茶は夏に成長した葉や茎で作るので味も香りも強くなっていると話していました。
村ではお茶を作る人が3人ほどいたようですが、摘み取り時期も作る方法も違っていたそうです。
毎年5月頃になると、その年のお茶の味み会を旧家の大旦那が村の旦那衆5、6人を呼び開いていましたが、その内の3人ほどが義母のお茶を求め愛飲されていました。
村の農家では、どの家にもお茶の木があり自家用の秋ばん茶を飲んでいました。

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